世間の思い込み④〜生活困窮者に対する誤解〜

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〜「生活困窮者」と「低所得者」は、イコールではない〜

「生活困窮者自立支援法」では、「生活困窮者」の定義を、「現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者をいう」と規定しています。

 

厚生労働省が今年7月に公表した、平成24年の「相対的貧困率」16.1です
この数値は、概算で6人に1人が貧困状態であるということを示していますが、
この数値が、イコール「生活困窮者」を示しているわけではありません。

 

この相対的貧困率は、等価可処分所得のデータをもとにしているので、
たとえば、年金収入だけであったとしても、持ち家に住み、定年退職金など潤沢な貯蓄がある世帯も含まれています。
逆に言えば、1千万円近い所得があったとしても、月々のローン返済など出て行くお金が多額であれば、生活困窮な状態になってしまいます。

 

ちなみに、今年4月に導入された消費増税に際して、国が支給している「臨時福祉給付金」「子育て世帯臨時特例給付金」は、
あくまでも「低所得者対策」であり、「生活困窮者への支援策」ではありません。

 

※相対的貧困率とは…家族一人あたりの等価可処分所得が、中央値の半分に当たる「貧困線」(平成24年の数値としては、122万円)に満たない世帯の割合
※等価可処分所得とは…所得から税金や社会保険料などを差し引いた、手取り額

 

〜「生活困窮者自立支援法」がイメージしている支援対象とは〜
来年4月から施行される法が規定している支援メニューは、

大まかに言えば、「就労支援」「家計相談」「期限付きの住宅費給付」「資金貸付」「学習支援」などがあります。
項目だけ見ると、一見、もっともなような気がします。

 

でも、現在、生活困窮な状態にある人たちの実態と照らし合わせてみると、いったい、どれほどの人たちに役立つ支援になるのか、はなはだ疑問を感じます。

 

まず、就労支援です。
確かに、働けていないから、生活困窮な状態にある人もいると思います。
けれども、圧倒的多数は、非正規雇用等の雇用状況によって、ワーキングプア状態にあると言われています。
だから、正規雇用や労働条件のいい職場への「転職支援」ならわかります。
けれども、「就労支援」の具体的な支援内容を見ると、就労に向けた訓練的な要素が強く、
「生活困窮者=働いていない人」という、ある種の思い込みが感じられます。

 

次に、家計相談です。
これについても、「家計管理ができていない」「浪費している」などの理由から、生活困窮に陥っているという思い込みが感じられます。
けれども、もともと入ってくるお金自体が少ないわけです。
当然のことながら、すでに切り詰められるところは切り詰めている状態である人に対して、どのようなアドバイスができるというのでしょうか?

 

期限付きの住宅金給付にしても、「失業等により住宅を失った人が、再就職等により収入を得るまでの間の支援」ということです。

また、資金貸付にしても、近い将来に再就職するなど収入が上がることを見込んで、貸し付けるということです。
状態が変わる見込みがないのに、返せる目途もない資金を借りることは、更なる負の連鎖にもつながりかねません。

 

また、子どもたちへの学習支援は、大変重要です。
けれども、一方では、高校や大学、専門学校に通うためには、多額の教育費がかかります。
そのお金が工面できなくて、断念せざるを得ないケースが少なくありません。

それも見込んで、トータルの支援の視点を持たなければ、本当の意味での子どもたちの学習意欲の喚起、あるいは持続させることは難しいとも言えます。

 

〜豊かな時代における、生活困窮とは〜
「普通にしていれば、人並みの暮らしができる」と思われている中で、人並みの暮らしができない場合、ともすれば、「人並みのことをしていないから」「努力していないから」「怠けているから」と、
あたかも個人の責任、個人が生活困窮の状況を招いているかのように思われがちです。

けれども、決してそうではありません。

 

先にも書きましたが、雇用形態や労働環境の悪化、家族形態の変遷など、
社会システムや社会状況の変化によって引き起こされていると言っても過言ではないケースが、圧倒的に多いです。

 

また、貧困状態・生活困窮状態は、相対的に考える必要があります。

 

たとえば、「白米が食べられない」状態や、「高校に行けない」状態であったとき、
一昔前の日本のように、国全体が貧しかった時代と、今の飽食で豊かな時代とを比較してみると、
精神面や社会面において、受けるダメージが全く違ってくるということは、容易に想像がつきます。

 

だからこその配慮と支援が必要であると思うのですが、
生活困窮者自立支援法に規定された事業はもとより、市の施策を見ていても、なかなか「支援」とは言い難いのが現状です。

tomoko