思い出したこと

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新たな年度が始まり、心機一転がんばろー!と張り切っている方、まだまだ不安な気持ちを抱えたままで過ごしている方などなど、いらっしゃるかと思います。

 

上の子が小学校の低学年の頃、朝になると必ず、「学校に行きたくない」と言っていました。その都度その都度、何とかなだめすかしては登校させていたのですが、ある時、とうとう家から一歩も出ない事態にまでなってしまったのです。

刻一刻と時間ばかりが過ぎていきます。
その時、ふっと閃いて、私は息子に、こう囁きました。
「家から出て二つ目の角を曲がった時に、くるりと回れ右をして、上を見てみて。すごく不思議なことが起こるから」
不思議なこととか、奇妙なこととか、大好きな子だったので、私の言葉にすぐさま反応して、自分から飛び出ていくようにして家を出ました。
東に面した2階の窓を開けると、指定した二つ目の角が見えるのですが、こちらから見えるということは、向こうからもこの窓が見えるということです。
駆けるようにしてその地点にたどり着いた息子は、ぴょんと飛び跳ねるようにして回れ右をして、きょろきょろしていましたが、すぐさま、「わぁっ!!」という声を上げたのです。その弾むような響きが、窓の陰に隠れていた私の耳にも届いてきました。
何が起こったのでしょう???

 

とあるテーマパークに行った時、自分の背丈ほどもあるような大きなぬいぐるみを気に入った息子が、自分のお小遣いで購入したのですが、なんとそのぬいぐるみが、「いってらっしゃい」と励ますかのように、窓辺から息子の方に体を向けて手を振っているのでした。

 

その後も、毎日、2階の窓には不思議なことが起こりました。ある時には大きなぬいぐるみがふざけてお尻を突き出していたり、またある時には、別のぬいぐるみが顔をのぞかせていたり。
息子は、「今日は何が起こるのかなー」と、それを楽しみにして家を出てくれるようになりました。

 

もう10年も前のことで、ずっと忘れていたのですが、なんだかふっと思い出してしまいました。
自分でもよく思いつくなーというくらい、毎朝毎朝、いろいろな「不思議なこと」を演出したのですが、ある時、もう飽きたのか、「もういちいち振り返るのが面倒だから、やらなくていいよ」と、息子に言い渡されて終わりました。

 

あの時はあの時で、必死だったけど、今思い返してみたら、とても笑える、ほほえましいエピソードです。
学校が嫌で嫌でたまらなかったその息子も、今年から大学生です。
ドアtoドアで1時間強の道のりですが、自分から進んで出かけて行っています。

 

いろんなことで悩んでいる方もいらっしゃるかと思いますが、なんとかなるものです。
どうなるかわからない先のことを案じるよりも、今できることを精一杯やってみてはいかがでしょうか。
私も気持ちを切り替えて、頑張ってみます!

tomoko